大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1784号 判決

昭和二十二年五月頃控訴人がその所有の別紙目録記載の家屋二棟を被控訴人荒川光右に売り渡す契約を締結したことは、代金の点を除き、当事者間に争のないところであつて、右事実と(証拠)を綜合すれば、前記家屋二棟はもと控訴人の祖父江川金平の所有であつたが昭和二十一年三月九日同人が死亡し控訴人が家督相続によりこれを取得したところ、右家屋はその以前から被控訴人荒川光右が賃借しその賃料を支払わないので、控訴人の母梅子は夫に戦死され控訴人をかかえて生活に窮していたので、義兄茂木正明に右家屋の売却方を依頼し、その結果昭和二十二年五月頃代金百万円にて被控訴人荒川光右にこれを売り渡す契約が成立し、右被控訴人は同年十二月頃から昭和二十三年八月頃までに数回に合計金二十万円を支払つたのみでその余の支払をしないので、前記梅子は残代金支払いの斡旋方を蔵前警察署に申し出でその結果昭和二十四年五月中頃右被控訴人は控訴人の親権者である右梅子に対し同月二十日金三十万円を支払い残額金五十万円は手形で支払うことを約定し、同月十九日右被控訴人が前記茂木正明を介し金三十万円を支払い乙第一、二号証の約束手形二通を交付し前記家屋につき所有権移転登記手続を経たが、右手形二通はいずれも不渡となつたことを認めることができる。(中略)しかして、控訴人がその主張の如く残代金四十万三千円の支払を催告し、更にその主張の如く前記売買契約を解除する旨の意思表示をなし、これが被控訴人荒川光右に到達したことは、当事者間に争のないところであるので、右残代金の支払いの主張並びに立証のない本件においては、右売買契約は右解除の意思表示の到達により、昭和二十七年十一月二十四日解除されたものというほかない。しからば、被控訴人荒川光右は前記家屋二棟を控訴人に返還し原状に回復すべき義務を負うものというべきところ、成立に争のない乙第十四号証の一、二によれば、右家屋二棟は、いずれも、昭和二十五年七月十二日訴外高津産業株式会社が代物弁済によりその所有権を取得しその移転登記手続を経たことが明らかであるので、控訴人はも早前記売買契約の解除により前記家屋の所有権を回復してもこれを対抗することを得ない結果となり、控訴人は被控訴人荒川光右に対しこれに代る損害賠償を求め得るものというべく、成立に争のない乙第十三号証の一、二によれば、当時の右家屋の価額が合計金百五十三万七千七百円であることを推認し得るので、これより控訴人主張の金額を控除した残額金九十四万円につき、被控訴人荒川光右に履行に代る損害賠償として支払義務のあることは明らかであるというべく、前記被控訴人荒川光右の供述と前記乙第十四号証の一、二によれば、被控訴人荒川光右と被控訴人荒川豊が夫婦でありその後前記家屋を被控訴人荒川豊が取得しそのうち家屋番号三百三十九番の一棟を訴外高橋進一に譲渡したことを認め得るが、これのみにては、被控訴人荒川豊が被控訴人荒川光右と共同して右家屋の追及を免れるためこれを他に処分したものと認めるに由なく、他に右事実を認めるに足る証拠がないので、被控訴人荒川豊に対する控訴人の請求はこれを認容するに由ない。

(岡咲 龜山 脇屋)

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